田螺姑娘

 むかし、むかし身寄りのない若い農民がいた。とても貧しく地主の田畑を耕して生活していた。ある日河の近くで野良仕事をしていると、河岸に大きくてとても綺麗な田螺(たにし)が太陽に晒されているのに気づいた。このまま陽に晒されていると死んでしまうに違いないと思い、それを家に持ち帰り水甕の中に放り込み飼い始めた。

 

数日後のお昼、畑仕事から帰り自分でご飯の用意をしようとした。戸を開けるとなんと食卓にご飯やおかずが並べられていて、とてもよい香がした。彼は奇妙に思った、誰がご飯の用意をしてくれたのだろう。こんなことが何日も続いた。事の真相をはっきりさせようと、ある日彼は早々と仕事を終い、こっそり入り口の戸の外に隠れた。間もなくお昼になろうという時、彼が戸の隙間から見ると、あの田螺が水甕から這い出してきて、身を振るわせるやいなや、とても綺麗な娘さんになった。娘は急いで米をとぎご飯をたき、おかずをとてもじょうずに作った。若い農民はあっけにとられながらも、彼女を妻にできたらどんなにか良いだろうと思った。そこで彼は急いで部屋に入った。田螺の娘は変身する間もなく、心から命を救ってもらったことを感謝した。彼が勤勉でまた誠実なのをみて彼と結婚した。結婚後若者はとてもこの娘を愛した。少し仕事をしては彼女を見に家へ帰るのであった。それからというもの彼は仕事をする時、彼女も田のそばに連れて行った。こうすれば働きながら彼女を見ることができるからだ。

 

ある日のこと、突然黒い雲が湧き上がり狂風が吹き出したとみるや、なんと風が彼女をさらっていてしまった。事の発端は皇帝が彼女の絵姿をみてなんと綺麗なのだろうと思い人を遣って彼女を探させた。彼らは大風に乗じて娘をさらっていったのだった。若い農民は妻が失踪したのをみて、心痛のあまりご飯ものどを通らず、寝つくことさえできず、彼女を探し回る決心をした。彼は田螺娘が残した装身具を持ち、食料を携えて、あちこちと彼女の行方を捜し求めた。何ヶ月も探したが探しだすことはできなかった。しかし彼はあきらめずになおもあちこち探した。

 

ある日のこと、彼はとうとう田螺娘が皇帝にさらわれて宮殿に連れて行かれたことを聞き出した。しかし宮殿は警護が厳しくどうやっても中に入ることができない。そこで彼は商人の格好をして宮殿の前で装身具を売ることにした。若者は宮廷の前にやってくると大きな声を張り上げ、“装身具は要らんかね! とっても綺麗な装身具があるよ!”と叫んだ。娘は売り声に聞き覚えがあり、夫が自分を探しに来たのが判った。そこで皇帝に言った。“皇帝様、装身具を買いに行きたいのですが。”皇帝は答えた。“そうか、お前が装身具を付けたらもっと綺麗なるだろう。行くが良い。”こうして娘は宮殿を出て、装身具売りのもとへ向かった。見ると果たして自分の夫だった。夫婦は再会すると何か方法を考えて,機を見て逃げ出すことにした。娘は商人に成りすました夫を皇帝のもとへ連れて行き説明した。“彼はお金ではなく何か他のものと装身具を取り替えるというのです。”そこで皇帝は尋ねた、“じゃあ、お前は何とだったら取り替えるのだ?”商人は答えた。“皇帝陛下の宝剣となら換えても良いです、私の装身具はとても値打ちがありますから。”皇帝は言った、“ようし、田螺娘が喜ぶのなら換えてやろう。”言うと宝剣をはずし商人に渡した。若者は宝剣を受け取ると、皇帝の隙を見て、この欲深く好色な皇帝を刺し殺し、娘を連れて飛ぶように宮殿を離れた。

 

家に帰ると彼らはまた幸せな暮らしを送ったのだった。

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