杜鵑啼血

 むかし、むかし四川に望帝という皇帝がいた。かれはとても民百姓を可愛がり、また農業に関することをよく知っていたので人々に田畑を開墾することを教え、四川を農産物の豊富な天府之国としていた。

 

ある年湖北の荊州地方に鼈霊(べつれい)という人が現れた。話によると、彼は大きな鼈(すっぽん)が変わったそうだ。井戸から這い出して死んでしまい,死骸が流れに乗り四川の明山のふもとの村に流れ着いた時生き返ったそうだ。そればかりか望帝のところにはせ参じお目どおりした。彼が帝の近くに進み出ると帝は眉をひそめ何事か悩んでいた。そこで訊ねた。“望帝様、何をお悩みですか?” 帝はため息をつくと彼に答えた。“ああ、もともとここに住む人々は落ち着いた暮らしをし、楽しく仕事をして暮らし向きもとてもよかったのだ。ところが山を焼き畑を開墾したことで追われた竜蛇化け物がやむなく山林を離れなければならなくなった。彼らは風を起こし、波を作り長江の水を膨大な量の石で塞いでしまった。水が東へスムーズに流れなくなったため多くの田畑が水につかってしまい人々の生活はとても苦しくなってしまったのだ。“ 鼈霊は言った。”お悩みになることはありません。私に治水工事をさせてください。“ 鼈霊の指導の下望帝は妖怪悪鬼をみな追い払ってしまった。また人民を引き連れ長江の巫山地方へ来ると、水をせき止めていた石を全部取り除き崖を切り開くと長江の水は再び東へスムーズに流れるようになった。人民はまたかつての幸せな日日を取り戻すことができた。

 

望帝は鼈霊が人民になした善行を見て彼の能力を認め、良い日を選んで盛大に儀式を執り行い彼に帝の位を譲り自分は西山に隠居してしまった。鼈霊は皇帝になった後自らを 従帝(不明確)と名乗り、人民を指導して水利事業を推進し田畑を開墾するなど多くの善政をしいた。人々はとても彼を敬愛した。しかし後に彼はだんだんと変わってしまった。高慢となり大臣たちの意見を聞かなくなり再び民百姓のことを顧みることがなくなった。人々の暮らしはまたとても苦しくなっていった。この知らせは西山に隠居した望帝の耳にも入った。彼はとても焦りしばしば夜中に起き上がり部屋の中をぐるぐると歩き回り、従帝が考え直すような方法を考えた。

 

ある日、朝早く起き上がり従帝の元へ向かった。この知らせは人民の知るところとなった。人々は一人が十人に,十人が百人にと膨れ上がり望帝の後ろについていった。皆で従帝に悔い改めてもらい、また民に幸せをもたらす様にお願いしようと思った。こうして事情はややこしくなっていった。従帝は望帝の後ろについている夥しい人の群れを見て、望帝が王位を奪い返しに人民を引き連れてやってきたのではと疑い、城門を硬く閉じさせ望帝が城に入ることを許さなかった。望帝は城に入ることが出来そうもないと見るやまた西山へ引き返し、従帝が過ちを正すような方法を考えた。

 

望帝はあれこれ考えるうちにホトトギスに身を変え宮廷の樹にとまり皇帝たるもの人民を愛護すべきであるという道理を従帝に告げようと思った。彼がこのように思いつめていくうち本当にホトトギスになってしまった。ホトトギスになるやすぐさま従帝の花園の一本の大木に飛んで来た。彼は大声で叫んだ。“民貴あ、民貴あ(min gui a)”その意味は人民こそ貴重である。人民の利益にこそ重きを置くべきだ というものであった。従帝はホトトギスの啼き声を聞き、あれは望帝が変わったもので自分に勧告するためにわざわざ飛んできたのだと知った。そこで驕り高ぶった癖を改め再び人民のために善政を行った。

 

この後四川は再び農産物が豊富で人々が落ち着いて生活をし、楽しく仕事ができる天府之国となった。しかし望帝はホトトギスになってから二度と元の姿に戻ることはなかった。歴代の皇帝を戒めるため、百年千年と絶えず叫び続けている。“民貴あ、民貴あ!”年々歳々叫び続け、またある皇帝は彼の言うことを聞こうとしないため、彼は苦しげに叫びとうとう血を吐いてしまった。彼の嘴は真っ赤に染まってしまった。これが 杜鵑啼血 の物語である。

杜鵑はホトトギス、またツツジの意味もある。ツツジは別名 映山紅 ともいう。杜鵑啼血映山紅という言葉もあり、ホトトギスが鳴きすぎ血を吐き山が赤くなったともいわれる。“映山紅”という名の蘭がある。

現在でも四川は 天府之国 といわれ“天府”の付いた蘭名が時々見かけられる。

中国の神話

蓮弁 映山紅

春剣 天府荷

天府紅梅

天府神梅

天府素梅

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