嫦娥奔月

 嫦娥は若く美しい娘であった。大きなつぶらな眼,弧のような眉、瓜実顔、長く黒い髪、細くすらりとしたスタイル、全く百里行っても一人見つかるかどうかの美人だった。彼女は翌が九つの太陽を射落としたという武勇伝を聞いて、人々のために災いを除いた行いにとても敬服した。それで翌に会えたらどんなにいいだろうと思った。翌といえば、九つの太陽を射落とした後もまだ人間社会にとどまっていた。彼もまたつねづね嫦娥という娘がどんなに綺麗で心優しいかを聞いていた。そこで彼もまた嫦娥を嫁にできたらどんなにかいいだろうと思った。なんとも幸運なことにある日二人はばったり出会った。つねづね互いに憎からず思っていた二人は間もなく結婚した。

 

当時地上にはまだたくさんの毒蛇や猛獣がおりしょっちゅう人間に害を与えていた。ある日嫦娥は翌に言った。“ねえ、あなた。あなたは弓の達人なのだから人々に教えてあげなさいよ。そうすれば害を与える猛獣を射殺すことができるわ。”翌はすぐに了解して若者たちに弓術を教え始めた。たくさんの弟子の中に蒙という若者がいた。この男はとても口がうまくじょうず者だったので翌はとても気に入っていた。しかし彼は心根のとても悪い男だった。彼は弓術の真髄をマスターすると自分が第一人者になりたいと願うようになった。それには師である翌を殺さなければだめだと考えた。

 

蒙が師を殺したいという思いは注意深い嫦娥には見抜かれていた。そこで彼女は翌に注意した。“あの蒙というやつには気をつけなければだめよ。あなたを殺そうと考えているわ。”翌は全く気にするそぶりもなく言った、“そんなことあるものか、弟子が師匠を殺すだなんて。”

 

ある日翌は鏡を見て白髪が生えているのに気づいた。彼は考えた。“西王母さまを探しに行こう。仙薬を貰って白髪を治し不老不死にしてもらおう。”そこで彼は苦心惨憺の末崑崙山で西王母さまを探し出した。西王母は翌の来訪を知り、前々から彼が九個の太陽を射落とし人々の災いを除いた大英雄であることを承知していたから、快く一個の不老不死の薬を与えた。そして彼に言った。“薬を飲むときは半分で充分だからね。それで不老不死になれるから。”翌は王母様にお礼を言うと家へ帰った。家に帰りつた翌は考えた。“ああそうだ、この薬半分嫦娥にやろう。そうすれば二人とも不老不死になれるわけだ。”そこで彼はとりあえずこの薬を嫦娥に渡し保管させた。

 

(この部分は他の文献からの引用です。

しかし不幸なことにこの薬のことを蒙に知られてしまった。翌が狩りに出かけ一人なのを知った蒙は短刀を抜いて薬をよこすように嫦娥に迫った。やむを得ず薬を取り出した彼女は蒙の隙を観て一口にこの薬を飲み込んでしまった。)

 

嫦娥は袋から薬を取り出すと誤って一口にみんな飲み込んでしまった。どうしたことか急に体が軽くなりふわふわと窓から飛び出しまっすぐ上へ上へと漂っていった。この時夜だったため嫦娥は月に向かって漂っていった。ふわふわ、ふわふわ。。。お月さまの寒宮に行き着いた。

 

 彼女はいつも寒宮のモクセイの樹のまえにたたずみ悲しげに地球を見下ろしている。

 

満月の時、お月様を見上げるとモクセイと嫦娥と小さな玉兔の影が見えるかもしれない。

 

 

 

翌も元々不老不死の神であったが何らかの理由で人間界におろされた英雄とされているようだ。なんだかスサノオのモデルのようだ。

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