宋梅物語

雲南蘭花網より

浙江省紹興の会稽山区に 四、五十戸の小さな村があった。村人の姓はみな宋といい、それ

でこの村は宋家店と呼ばれた。言い伝えによると 清朝乾隆年間、村に宋錦施という商売人がい

た。彼は紹興産のお茶や、山で取れたものを杭州や蘇州へ運び売っていた。帰りにはそこの竜

頭細布などの商品を紹興へ持ち帰り売った。商売は順調に行き十年の努力の後小さな店からだ

んだん大きくしとうとう当地でも有名な大金持ちになった。

この宋錦施は大金持ちになっても、彼自身が貧しい出だったので生活に困っている郷里の人

に対していつも同情し、お金や食べ物を与えたが、自分は酒やタバコもやらず相変わらず粗末な

ものを食べ質素な暮らしをしていた。ただ一つ養蘭、愛蘭だけが彼の一生の最大の趣味でしょっ

ちゅう一鉢の良い蘭を手に入れるために大枚をはたいていた。彼の家は山に囲まれていて一歩

門を出ると山が見え、山々には蘭が生えていた。春になり、仕事が暇な時はいつも鍬を持ち、竹

篭を背負い山に蘭を採りに行った。しかし数十年探し回っても良い蘭にめぐり合うことはなく、とて

もがっかりしていたがそれでもめげることなく良い蘭にめぐり合えるその日を夢見ていた。

ある年,元宵節も過ぎ地面がだんだん暖かくなりお茶の木にも新芽がふきだしてきたある晩、

宋錦施はひとり寝床でまた蘭のことを思い出し独り言を言った。蘭の花はどこにでもあるのに良い

蘭を探すとなるとなんでこんなに難しいんだろう。まさか俺は水面の月をすくう猿のように無駄な

ことをしているわけでもあるまいにとあれこれ考え、続けざまに何度もあくびをし頭がボーとしてき

た。突然彼は白髪混じりの、襟に縁取りのある服を着、両手に玉のブレスレットをした年のころ六

十位の老婦人に出会った。十五、六歳くらいの娘を連れ彼の前にやって来ると丁寧にお辞儀をし

彼にこういった。“この娘は私の隣に住んでいて,父母を亡くし頼るべきよすがもないのです。私

はそちら様が他人の困窮に同情なさり快く施しをされると知りました。そこでこの娘をそちら様に

お願いしたく連れてまいりました。奴婢としてただ暖かいご飯を与えていただければと思います。”

言い終わると老婦人はどうかお願いしますと言う眼差しで宋錦施の答えを待った。宋錦施はこの

娘をしげしげと見た。着ているものはボロボロだが眉目秀麗で端正なうりざね顔で、美しさを失っ

ておらず、感慨を禁じえなかった。彼はすぐに承知しこう言った。“ご婦人、すこしほめすぎです。

私自身が貧しい家の出ですから、貧しい者どうし助け合い、隣同士助け合おうというのがふるさと

を同じくするものの言い分てもんです。それじゃこの娘を私の養女にしましょう。どうぞご安心くだ

さい。”老婦人は娘を置いて、何度もお辞儀をし感謝の言葉を述べた。

宋錦施は慇懃に老婦人を門まで送り別れの挨拶をした。。。ゴロゴロという春雷の音に宋錦施

は目を覚まし、頭がはっきりしてくると先ほどの出来事が夢であることが分った。彼はシトシトと降

る春雨の音を聞き、夢の中の出来事を考えるとしばらく眠れなかった。

数日後、ある穏やかな午後、宋錦施はまた山に蘭を探しに言った。彼は蘭がたくさん生えて

いる日当たりの悪い堤を知っていた。しかし蘭は沢山生えていたが花芽は痩せて釘のようで苞衣

は薄く色も淡い、葉幅も狭くろくなものはなかった。しかたなく次々と山を越えていった。山の中で

は春風が顔をなで鳥たちがさえずり,清清しくひっそりした雰囲気が増してきた。良い蘭を探そう

という気分がいやがうえにも増したが、頭を上げてみると陽が傾きかけていた。彼は疲れ果てた

足を引きずり幾分がっかりしてゆっくり山を降りていった。不注意で、山道にでっぱった石につま

ずき仰向けにひっくり返ってしまった。幸いにもそこは平坦な場所でことも無く、彼はゆっくり起き

上がった。突然近くのイバラの茂みの中に一株の蘭がそよ風に震えているのを気づいた。彼はこ

こは土地も痩せ、理屈で考えても蘭が育つはずがないのにと奇妙に思い、好奇心に駆られ近づ

いてみるとこの蘭の葉は夕日のもと濃い緑色をしてとても幅が広いことが分った。油を塗ったよう

に輝き、一枚一枚弧を描き,柔らかさの中にも剛直さが感じられ、十分観察する価値があるよう

に見えた。さらに注意してみると蓮にも似た丸々とした花芽があった。急に彼は気持ちが高ぶっ

てきた。思うに、半日何の収穫もなかったけど、ひょっとしてこれは素晴らしい蘭じゃなかろうか。

そこで彼は袖をたくし上げ、手のひらに唾をし鍬をしっかり握り締め、先ず蘭の周りのいばらを取り

除きそれから注意深く蘭を掘り起こし,籠に入れ大急ぎで山を降りた。家に着くと泥鉢にそれを植えた。十

数日して蘭は春に促されゆっくり花茎を伸ばしとうとう開花した。この花は葉上に咲き、平肩で花茎は青く,

三弁は瑞々しい緑色で、きりっとした丸弁で、先端に突起があり、外三弁の縁はまるで筆で描いたような白

線に囲まれ、蚕蛾捧心、劉海舌、その幅広でくぼみがあり先端がまん丸の葉と渾然一体となり相互に趣を

深め合い少女の肢体にも似た優雅さである。

しなやかで美しい。宋錦施はこの花は間違いなく梅弁の極品に属すると分った。至宝を得た如く望外の

喜びであった。彼は朝起きては眺め、昼になったら眺め,日中眺め、夜になったら灯りの下また眺めいくら

見ても見たりなかった。勃然と彼は半月前のあの夢を思い出し、足がもつれるのを覚えた。“おー”!彼は

ハッと悟った。この蘭の葉形、花形は鮮やかにひとの心に感動を与える、これは正にあの夢の中で見たあ

の娘さんじゃなかろうか?

この後、宋錦施はさらに心を込めてこの蘭を育て絶え間なく出芽成長させ、増殖させ、自分の姓をもっ

てこの蘭に“宋梅”と名づけた。二百年以上が過ぎ,江浙一帯の養蘭家や山採り人が次々とたくさんの梅弁

の新品種を見つけたが、宋梅に比べるとどうしても見劣りするのである。宋梅こそが梅弁の中の第一人者

であり、梅弁の典型的な代表である。





 (この話が言い伝えなのか全くの作り話なのかは分りません。)

宋梅の花いろいろ

どれが最も宋梅らしい宋梅なのだろうか

古い写真 二花咲き

(東方蘭花網より)

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